カットはもちろん、プロダクトやスパにカフェ、そして自然電力の勉強会にポップアップなど、TWIGGY.を全方位的にリアルで体験する日々をエッセイでお届け。読めばサロンのさまざまな“引き出し”を疑似体験できるかも? 今回は2020年TWIGGY.ヘッドスパに新たに加わった強力メニュー、「メディチャーライト」に初トライ。

「王道に最新…ヘッドスパ、
10年、20年先の髪を育てる」vol.2

頭皮の守護神的存在・TWIGGY.のスパの未体験メニュー、メディチャーライト。そこにはいつもお願いしているオールハンドのスパリストとは別の専門のスタッフがいて、名前を久保田さんという。プロのメイクアップアーティストで温熱美容療法士でもある彼女は、メディチャーライトの持つ可能性に興味を抱いたことがきっかけとなり、この施術をTWIGGY.ではじめることになったのだそう。サロンへのコンバートは、TWIGGY.オーナーである松浦美穂さんによるという。

全国的に見ても、メディチャーライトをヘアサロンに取り入れているところはごく少なく、TWIGGY.が先駆者と言ってよいそうだ。LEDと電気刺激の両方を照射することができる機器を用いるのであるが、いかんせん初体験。なにがはじまるのか未知のことが多い中、まずは頭皮のクレンジングやシャンプー、トリートメントをした後、いよいよメディチャーライトを初体験となった。久保田さんが機械を片手に施術の説明をしてくれる。

「まずデコルテからはじめますが、機械が当たるとちょっと響くような感覚があるかもしれません。不快だったら遠慮なく声をかけてください」。

たしかにゴゴゴ、というかブブブ、というか振動がある。でも不快じゃないと伝えると、次は頭皮に。そしてまた異なる機械が当てられて…このあたりで意識は飛び、気がついたら名前を呼ばれていた。施術が終わっていたのである。

この感覚をなんと表現すればよいのだろうか…いつもの、手で頭やデコルテをマッサージしてもらうヘッドスパが、腹筋運動だとしたらこれはもっと奥の筋肉=体幹を鍛えるためのエクササイズといった感じ。マッサージ的動作は一切ないのに、肩や首や、頭の、手では到達できない奥の奥の方で滞っている“なにか”に信号を送ってくれたような印象である。触られたのではなく、撫でられたのでもなく、ただ当てられただけなのに、なんだこの深いリラクゼーションは!という感じ。事実記憶が飛んでいるので、なにが起こったのかまったく分からず時間だけが進んでいたのである。プチ浦島太郎だ。

久保田さんいわく、メディチャーライトはがんサバイバーの治療などに使用されている施術であるらしく、放射線治療で髪が抜け落ちた頭に数ヶ月で毛が生えてきたりする事例もあるそうだ。また長年円形脱毛症で悩んでいた人も、そこに毛髪が生えてきたケースも。トリートメントと治療の中間というのがふさわしいかも知れない。久保田さんはいろいろな人の頭の悩みを救う施術に惹かれ、現在に至るのである。

健康な頭皮を持つ若い人にとっては、メディチャーライトはまだ早い施術だといえるし、必要性が感じられないだろう。しかし医療技術と美容の中間のような施術をヘアサロンで受けられるというのは、長い目で見れば安心で頼りになることだ。いつでも駆け込もうと思えば、よく知っているあそこに心強い場所があると思えるのだから。

TWIGGY.はオーガニック食材を使ったカフェや、天然原料をベースにしたヘアケアプロダクツに屋上のガーデンや農園など、「自然に育ったもの」や「健やかな大地の恵み」に大変意識的である。しかしだからといって手紡ぎ草木染めの服しか着ません、という限定的な趣向はない。

ファッションや音楽、食に関しても感度が高く“今”を取り入れる。“昔ながら礼賛”ということではなく、最新もそれがよいと判断すれば積極的に取り入れる。メディチャーライトという機械の導入も然り。スパという空間では、どこであってもセラピストの“技”が重要視されるが、TWIGGY.の場合、その“技”の意味はテクニックの技と同時に、科学技術を意味するテクノロジーも併せ持つようだ。

writer

田中敏惠(Toshie Tanaka)

ジャーナリストの経験を活かし、エディトリアルディレクションやプロデュースを請け負う株式会社キミテラスを立ち上げる。TWIGGY.には西麻布のサロンから通い始め20年近くとなる。ライフワークでもあるブータン王国との架け橋の一環として、本年よりClean Bhutanの日本エージェントに。
kkimiterasu.net

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