カットはもちろん、プロダクトやスパにカフェ、そして自然電力の勉強会にポップアップなど、TWIGGY.を全方位的にリアルで体験する日々をエッセイでお届け。読めばサロンのさまざまな“引き出し”を疑似体験できるかも? 3回目はTWIGGY.の個性が散りばめられたインテリアにフォーカス。

「内部の装い、
サロンの調べに通ず」

旅先や見知らぬ場所で「カフェかな?」「こんなところにギャラリーショップがあるのか」と思って覗いてみたら、ヘアサロンだった……。そんな経験をしたことはないだろうか。私はものすごくよくある。

インテリアにちからを入れているヘアサロンは、じつに多い。またその空間は、ミッドセンチュリーモダンが流行るとイームズチェアが、北欧ブーム到来するとアアルトの雑貨やクリントの照明というふうに、時代のトレンドとそれを象徴するアイテムを据える傾向があるようだ。
渋谷区神宮前にあるTWIGGY.は、真っ白な四角い三層からなる建物で構成されている。ベースは白壁ながら、ところどころビビッドな色の壁面があったりして、どのフロアとて同じ表情をしていない。そしてまた北欧とかミッドセンチュリーモダンとかブロカントなど〇〇スタイルというセグメントができない内観になっている。

神宮前の現在の建物の前、サロンは西麻布にあった。私はそのころから通っているが、現在の店舗同様、前身もTWIGGY.のインテリアを〇〇風という言葉では語れなかった。けれどそこには共通するキーワードがあるような気がしている。

まず、グリーン。現在はエントランス部分やパティオ、屋上庭園の緑が訪れる者の目を楽しませてくれるが、西麻布では吹き抜けに大開口の窓がありそこからは竹林が一望できた。ある意味象徴的な景色だったと思う。事実オーナーの松浦美穂さんは「あの竹林で物件を決めた」と言っていた。

次に、ロンドンパンク。サロンの椅子は全部統一されているわけでなく、中にはヒョウ柄もあるし、小さな螺旋階段のステップは紫である。そして西麻布時代から白×黒のチェッカー柄の床が採用されている。パンクと言えないかもしれないがレセプション脇には、英国の老舗チェスターフィールドの年季の入ったレザーソファが置かれている。60年代、ロンドンから世界を魅了した伝説的モデルと同じ名を持つサロンらしいエッセンスである。

加えてユニークだと思うのが、世界中の手仕事によって生まれた小物や布がところどころ散見するところだ。トライバルあり西洋民藝ありアジアの手仕事あり。これらは美穂さんはじめ、TWIGGY.のスタッフによる“元私物”も含まれている。インドの刺し子・ラリーキルトがシャンプー台のひざ掛けに使われていたり、スパで着替えを置く台がアジアの漆の小盆だったり、オイルがバリ島のココヤシの物入れに入っているという具合である。

こうやってキーワードを挙げていくと、TWIGGY.の空間演出はベースといえるスタイル(ロンドンやパンク)に、心地よさ(グリーン)と趣味性(旅先で手に入れた手仕事のモノ)が加えられ、さらにはアートで味付けがされているのだということに気づく。

〇〇スタイルでセグメントされるトレンドという記号はひとつの顔しか持たないかもしれないが、人物像というのはバックグラウンドから趣味、そして心地よいと感じるジャンルなど多面的な要素が相まって成り立つものだ。TWIGGY.は、髪を発端にしているがそこからライフスタイルを発信しているサロンである。なるほど、名は体を表すというが、TWIGGY.のインテリアは、ここがどんなサロンであるかを端的に表現しているのである。

writer

田中敏惠(Toshie Tanaka)

ジャーナリストの経験を活かし、エディトリアルディレクションやプロデュースを請け負う株式会社キミテラスを立ち上げる。TWIGGY.には西麻布のサロンから通い始め20年近くとなる。ライフワークでもあるブータン王国との架け橋の一環として、本年よりClean Bhutanの日本エージェントに。
kkimiterasu.net

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