美しい髪を育てるには、これだけあれば十分―“美は健康”という着想を得た松浦美穂が、「YUMEDREAMING」に込めた想いを、全3回の連載で語ります。

ヘアサロンからスタートしたTWIGGY.が、なぜオリジナルプロダクトを開発したのか。
そこには、サロン、プロダクト、カフェ、スパなどがリンクしつつ、
独自のスタイルで新しいプロダクトの提案をしてきた背景があります。

ブランド誕生から10年、頭皮と髪の専門家という意識でプロダクトをつくっています。 美しい髪を育てるためには、髪の土壌である頭皮をいたわり、傷んでいたら手当する必要がある。それなのに、“頭皮科”という病院は無いでしょう? 美容師が考えて行動しなくちゃ誰がやるのかと思う。つまり「美容師たるもの、医者と同じくらいの感覚を持って製品をつくりたい」という意識なんです。

今の世の中には、ありとあらゆる美容プロダクトがあります。たとえば、TWIGGY.オリジナルの香りのボディオイルを出しても、それはモノが増えるだけで、SDGsでもなければエコでもない。美容師としての経験を活かしたプロダクトでなければ、TWIGGY.が出す意義はないと考えています。

そして美容師は、髪のことだけではなく、頭皮のことも勉強していかないといけないと私は思っています。たとえば、美容師それぞれが皮膚学など興味のある分野を学ぶ。それらの知識を総動員してオリジナルのプロダクトをつくり、今出来る限りの技術を駆使して、常に進化させていく…。“良いプロダクトがひとつできたから満足”でも“ただただ新しいプロダクトを増やそう”でもなく、「今の世の中にはない、でも絶対に必要なプロダクト」をつくり、進化させ続けること。それが私たちの役割なのかなって思っています。

― 一人ひとりの美容師が学んだ知識や技術から、TWIGGY.のオリジナルプロダクトが生まれる。ということは、サロンで繰り返される日々の体験も関わってくるのでしょうか?

もちろん!髪って気持ちの変化だったり、どんなものを食べてきたかだったり、心身のあらゆることが如実に表れる場所なんです。私たちは毎日お客様と話をしながら髪を見ているから、なにが体によい効果をもたらし、なにが悪い影響を与えているかピンときてしまう。「ああ、髪が傷んでしまった…でもしかたない、ごめんなさい」なんていうことは言えません。そこまで頭皮や髪のことを考えて、ヘアデザインをつくり上げる技術や経験も美容師には大切なんです。だからこそサロンで施術した後は、ホームケアでどうやって頭皮と髪をいたわっていくかを伝えたい!それが「YUMEDREAMING」というプロダクトをつくる原点ですね。

TWIGGY.の考える本質的な“美”は、健やかな心と身体を育むこと。そして人間だけでなく、地球や自然環境が健やかであることも大切だと思っています。長年サロンを続けてたどりついたのは、“頭皮は守るもの、毛先は遊ぶもの”というメソッド。「あなたの髪本来の美しさは、健康な頭皮がつくるんだよ」と、何度でもくりかえし伝えたいですね。

―では、「YUMEDREAMING」のことを具体的に聞かせてください。
特に、プロダクトに込められたヘアとサステナブルについての理念を伺いたいです。

そもそもTWIGGY.らしいエッジの効いたスタイルの中に、植物療法を活かしたライフスタイルをどう表現するか考えていたときに、自分の中でひらめいたんです。それはロンドンでの経験がヒントになりました。
ロンドンでは、生活にとても自然な形でオーガニックが息づいていたんですが、そもそもオーガニックは概念であり、ライフスタイル(生き方)であるということ。つまり、生きていくためのひとつの方法です。オーガニックな食材を選び、オーガニックな服を着ているからオーガニックなのではなくて、大切なのは、ものごとを根本からオーガニカルに考える。それは持続可能な行動にもつながることなんだと思います。自ら行動しながら学び、自分なりに本質的な答えを出していけるか、みたいなことだと思います。ロンドンに移住をしたことで、私が自然に身につけてきたことのひとつなんです。

―ロンドンでの経験を、プロダクトにどう活かしているのでしょうか?

プロダクトと言っても“モノ”をつくりたかったわけではないんです。 プロダクトにはオーガニック成分や植物由来成分を使っていますが、それは純粋に、ヘアや体になにがいいのかを知ってほしかった。オーガニカルな考え方や生き方を伝えたいという気持ちの表れでもあるんです。たとえば私たちは、微生物いっぱいのオーガニックの“発酵食品”をとると、身体が元気になることを日常的に知って学んでいますよね。それと同じように、じつは頭皮や髪に働きかけているのも微生物のちからだったんだよ、ということを知ってほしかったんです。人間には本来、自然治癒力が備わっていて、微生物はその力をおおいに助けてくれる。それを信じてプロダクトをつくりたいと思いました。

―松浦さんのその想いや理念を、
スタッフの方々とはどんなふうに共有しているのですか?

植物のちからや人の自然治癒力を信じること、そして同じくらい環境についても考えること。30年前からずっと言い続けてきたことが、今、等身大の話になったと思えることはとてもうれしいです。だけどこれからは、時代に追い越されないように、置いてけぼりのTWIGGY.にならないようにしないといけない。そのための鍵はスタッフたちが握っていると思っています。

スタッフにも自分にも言い続けてるのは、「去年と同じことをしてはだめ。変えるだけでもダメ。昨日より1センチでも、まずは自分が成長すること」。自分自身で課題を決めておいて、パソコンを開くたびに必ずそのワードを検索するとか、ちょっとしたことでいいんです。そして、何かアイディアがひらめいたらまず自分で実行してみて、よかったら人に伝えること、シェアすること。自分のことだけを考えるのではなくて、周りの人たちも巻き込んで、熱意(愛)を持って取り組んでいくことが必要だと思うんです。私もそうするから、みんなにもそうして欲しい。「あなたが考えていることを早く教えて!」って思います。常に良い新陳代謝が行われているTWIGGY.でありたいし、みんなはそのためにTWIGGY.に集まっているんだから。

―“新陳代謝”は、松浦さんのお話によく登場する大切なキーワードですね。

そうですね。風通しのよさと新陳代謝のよさが、私が思うTWIGGY.の面白さ。たとえば新しいプロダクトをつくるときは、私と商品部のスタッフだけでなく、ヘアスタイリストやカラーリスト、フロントスタッフなど、みんなの意見が飛び交うんです。そして、新しいプロダクトのサンプルが上がってきたら、全員で試して感想や問題点をシェアします。それを繰りかえすうちに、右往左往してたプロダクトが凝縮し、骨子がカチッ!とハマる。その瞬間を本当に肌で感じるんです。

TWIGGY.が新陳代謝を繰りかえす中で、自分自身が変わったこともあります。私はA型なので根は真面目なんだけれど、ライフスタイルは“良い加減”。気持ちいいとか楽しいとかワクワクすることを、ついつい優先しちゃうんです。それもあって、昔は思いついた瞬間にすぐ行動するタイプだったのですが、40歳を過ぎてから少しずつ考え方が変わってきたのかな。「ちょっと待って。行動する前に最低限のことは考えよう」って、結果を出すまでに時間をかけることに決めました。なにか思いついた時、「この感覚をどう育てればいいのかな。もっといいものにならないかな」と掘り下げて考えてTRYする。“THINKINGしながらTRYING、DOING”というスタイルにチェンジしたんです。

次回は、「去年と同じことをしてはダメ」という松浦美穂とスタッフが、新しいプロダクトをどのようにつくり出しているのかを紹介。ヘアとサステナブルの良い関係について、リアルな想いを語ります。

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